金属-半導体接触は,その名の通りに金属と半導体が接触したものです.金属-半導体接触は,ショットキー接触とオーミック接触に分けられます.本記事では金属-半導体接触について解説していきます.
金属-半導体接触
金属-半導体接触は金属と半導体を接触させたものです.金属-半導体接触は特性によって,ショットキー接触とオーミック接触の2種類があります.ショットキー接触は,ダイオードのように一方向のみで電流が流れる整流作用を持ちます.オーミック接触は金属同士の接触のように,両方向で電流を通す性質があります.
ショットキー接触とオーミック接触のどちらになるかは,不純物濃度や金属の種類によります.以下でそれぞれ説明していきます.
ショットキー接触
ショットキー接触は,電流が一方向のみで電流が流れる整流作用を持つ金属-半導体接触です.ショットキー接触について,図1の金属とn型半導体のショットキー接触から説明します (金属とp型半導体でも同様の動作をする).
図1の上では接触していない金属とn型半導体を示しています.それぞれは別のポテンシャルを持つため,接触させると図1の下のようにポテンシャルの壁を形成します (ショットキー接触の場合).
ポテンシャルの壁の形成する原理は,以下の通りです.金属と半導体を接触させると,フェルミ準位が一致するまで,半導体から金属に電子が移動します.これによってpn接合同様に,n型半導体で空乏層 (電子がなくなった層)ができます.空乏層は電子がなくなった分,プラスの電荷をもつため,ポテンシャルが曲がり,金属側と半導体側の両方にとってポテンシャルの障壁ができます.
このポテンシャルの高さ\(q\phi _B\)をショットキー障壁高さといいます.この障壁によってどちら側からもキャリア (電子)が移動しづらくなります.
ショットキー接触になる条件
ショットキー接触になるためには,ポテンシャルの障壁ができる必要があります.真空準位とフェルミ準位の差を仕事関数といいますが,金属の仕事関数を\(q\phi_m\),半導体の仕事関数を\(q\phi_s\)とすると,障壁ができる条件 (ショットキー接触になる条件)は\(q\phi_s<q\phi_m\)になります.
順方向バイアス
ショットキー接触に順方向にバイアスをかけた場合を図2に示します.
順方向バイアス (半導体にプラス)をかけた場合,電圧は電子が半導体に引き付けられる力として働くため,半導体から金属へ移動した電子が少なくなります.そうすると空乏層は狭くなり,図のように半導体からみた障壁のみ下がります.そうして,拡散によって半導体から金属に電子が移動することで電流が流れます.
逆方向バイアス
反対に逆方向バイアス (金属にプラスの電圧)をかけた場合,図3のように半導体からみた障壁がさらに高くなります.そうすると,拡散による半導体から金属にキャリアが移動しずらくなるため,電流がほとんど流れません.
ショットキー接触の応用先
ショットキー接触は以上のように整流作用を持つため,ショットキーダイオード (ショットキーバリアダイオード)に応用されます.ショットキーダイオードはショットキー接触の整流作用を用いたダイオードです.
オーミック接触
オーミック接触は順方向と逆方向の両方で電流が流れる金属-半導体接触です.ショットキー接触とは反対に,図1の障壁がない場合がオーミック接触です.
オーミック接触になる条件
オーミック接触になる条件は,ショットキー接触とは反対に,障壁ができないことが条件となるため以下のようになります.
$$q\phi_s>q\phi_m$$
しかし,この条件を満たさなくてもオーミック接触になる場合もあります.通常,\(q\phi_s<q\phi_m\)ではショットキー接触になりますが,半導体の不純物を高濃度に添付すると,空乏層が狭くなってトンネル効果が発生します.トンネル効果が発生すると,電流が流れるようになります.この高濃度不純物によるオーミック接触もしばしば用いられます.
オーミック接触の応用先
オーミック接触は,集積回路の半導体と配線をつなぐ,コンタクトとして利用されます.
まとめ
- ショットキー接触:電流が一方向のみで流れる整流作用を持つ金属-半導体接触
- 仕事関数:真空準位とフェルミ準位の差
- ショットキー障壁高さ:ショットキー接触において金属と半導体のポテンシャル障壁の高さ
- ショットキーダイオード:ショットキー接触の整流作用を用いたダイオード
- オーミック接触:順方向と逆方向の両方で電流が流れる金属-半導体接触