イメージセンサの性能・評価方法一覧

工学
あお

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 イメージセンサでよく使われる性能・評価方法をまとめました.イメージセンサの勉強や計測などで役に立ててもらえれば幸いです.

性能・評価方法 (感度・飽和電子数等)

感度

 感度はイメージセンサ (画素)に入る光に対して,出力される信号の大きさのことです.基本的に感度が大きいほど,暗い場合でもより高いS/N比を持つ信号を得ることができます.感度としては変換効率や量子効率で比較されることが多いです.

 感度を比較する際は同じ条件で,また電子数・光電流・アナログ信号電圧・デジタル信号のどれで比較するかも考えなければいけません.またカメラシステムとしては感度F値依存や撮像面位置依存などにより,感度が低下することも考慮する必要があります.

ISO感度

 ISO感度はカメラに入った光をカメラ内でどれだけ増幅させるかを示す指標です.ISO100からISO200にすると,明るさを2倍に増幅させます.しかしの信号だけでなくノイズも増やしてしまうことに留意する必要があります.

 ISO感度のISOはInternational Organization for Standardization(国際標準化機構)の略です.

開口率 (Fill Factor)

 開口率 (Fill Factor)は画素の大きさに対するPD (フォトダイオード)の開口している部分の比率のことです.開口率が高いほど感度も高くなるため,感度の指標の一つとして使われることもあります.

リニアリティ特性(線形特性)

図 リニアリティ特性

 リニアリティ特性は,上図のように輝度を上げながら撮影した際の出力をグラフにして,入力に対して出力がリニアリティかどうかを示す特性です.リニアリティを補正する処理としてガンマ補正があります.

コンバージョンゲイン (CG: conversion gain)

 コンバージョンゲイン (CG: conversion gain)は電荷電圧変換ゲインであり,電荷1つあたり何Vの電圧に変換して出力するかを示す,感度の指標の一つです.コンバージョンゲインは信号と光ショットノイズの関係から求めることができます.

 出力信号はコンバージョンゲインを\(G_C\),発生した電荷の数を\(N\)とすると,\(V_S=G_CN\)となります.このときに標準的に発生する光ショットノイズの電子数はショットノイズの特性から\(\sqrt{N}\)となるため,標準的なショットノイズの出力電圧は\(V_{SN}=G_C\sqrt{N}\)となります.以上からコンバージョンゲイン\(G_C\)は以下のようになります.

$$G_C=\frac{V^2_{SN}}{V_S}$$

  \(V_{SN}\),\(V_S\)は計測から求めることができます.一定の光をセンサに照射して複数回撮影します.そしてその標準偏差はバラつきを示し,光ショットノイズと光に依存しないランダムノイズの成分が入っています.光が強い場合はショットノイズが支配的になるため,ランダムノイズを無視することができるので,標準偏差がそのままショットノイズ\(V_{SN}\)になります.信号\(V_S\)は複数枚撮影した信号で平均するばショットノイズとランダムノイズが抜けた信号となることで得られます.

飽和電子数 (FW:Full Well)

 飽和電子数 (FW:Full Well)は画素内でため込むことができる最大の電子数を示します.これが高いほど強い光でも飽和せずに,信号として取り出すことができます.飽和電圧\(V_{sat}\)とコンバージョンゲイン\(G_C\)から以下のように導くことができます.

$$V_{sat}=FW\times CG$$

図 飽和電圧

リニア飽和電子数

 リニア飽和電子数はリニアリティ特性で線形な領域で,最大まで電荷をため込むことができる電子数のことです.

図 リニア飽和電子数

ダイナミックレンジ (DR)

 ダイナミックレンジ (DR)は光を電気信号に変換できる,光の強さの範囲 (レンジ)を示します.図ではSNR (SN比)が1から飽和するまでのレンジをダイナミックレンジとしています.

図 ダイナミックレンジ

QE (Quantum Efficient)

 量子効率 ( QE:Quantum Efficient )は画素に照射された光子が,電子として出力された効率のことです.量子効率はカラーのイメージセンサであれば分光特性としても用いられます.量子効率は分光器等を用いて計測できます.

図 量子効率

性能・評価方法 (ノイズ)

光ショットノイズ

 光ショットノイズは同じパワーの光を照射しても,光がゆらぎによってひらいする光子がばらつくことで発生するノイズです.入射した平均のフォトン数を\(N\)とした場合に,標準的に発生する光ショットノイズは信号の標準偏差である\(\sqrt{N}\)が光ショットノイズとなります.

 一定の光をセンサに照射して複数回撮影したとき,その標準偏差はバラつきを示し,光ショットノイズと光に依存しないランダムノイズの成分が入っています.光が強い場合はショットノイズが支配的になるため,ランダムノイズを無視することができるので,標準偏差がそのままショットノイズになります.

Read Noise (RN)

 ランダムノイズ (RN)はランダムに発生するノイズで,発生する原因は様々あります.ランダムノイズは光ショットノイズと光の強さによらないランダムノイズがありますが,光ショットノイズは入射する光によって決まるので評価したい場合は光ショットノイズ以外のランダムのノイズで比較します.

 光を入射しない状態で複数回撮影してその標準偏差を計算すれば,それがバラつきとなり,ランダムノイズを示しています.この計測では暗電流ショットノイズも含むため,温度や時間によって変化します.

固定パターンノイズ (FPN:Fix Pattern Noise)

 固定パターンノイズ (FPN:Fix Pattern Noise)は同じ箇所で発生するノイズです.

 FPNは光を照射しない状態で複数枚の画像を取得して平均化することでランダムノイズを小さくした上で計測できます.このFPNには熱と時間に依存する暗電流による成分と依存しないしきい値ばらつきなどの成分があります.時間を変えて計測してフィッティングすると時間依存とオフセットを計測できます.

PRNU (Photo Response Non Uniformity)

 PRNU (Photo Response Non Uniformity)は感度ムラのことで,同じ強さの光が照射されても各画素で同じ出力にならないために発生するノイズです.

 画素全体に同じ強さの光を照射して,FPNを引いてかつ複数枚撮影してランダムノイズを除去するとPRNUがどれだけかが見えます.

性能・評価方法 (SPAD)

DCR (Dark Count Rate)

 DCR (Dark Count Rate)は光が入射されてない状態で検知された確率のことです.

デッドタイム (DT)

 デッドタイム (DT,不感時間)は光子を検知してから,次に光子を検知できるようになるまで不感になった時間のことです.

AP (After Pulse)

 AP (After Pulse)はなだれが起きている際に電子が捕獲されてしまい,あとから放出されて再びなだれが起きて信号として検出されていまう現象です.

PDP (Photon Detection Probability)

 PDP (Photon Detection Probability)は入射された光子一つを検出する確率です.

PDE (Photon Detection Efficiency)

 PDE (Photon Detection Efficiency)は入射した光子を検出する比率を示す特性です.定義によりますが,PDEとPDPの関係として以下のものがあります.この場合,PDEはPDPより小さいです.

 PDE = PDP x 開口率 (Fill Factor)

性能・評価方法 (一般)

IRT (Impulse Response Time)

 IRT (Impulse Response Time)はインパルス波を照射したときの応答を見ます.間接ToFなどで複数の電荷蓄積部を持つ画素の転送やラグの評価をすることができます.

FoM (Figure of Merit)

 FoM (Figure of Merit:性能指数)はイメージセンサ以外でも任意の様々な性能を示す際に使われます.イメージセンサ全体を評価したい場合に,感度やノイズなどを含んだ式を用意してその値を比較したい他のイメージセンサなどでも出して評価する際などに使われます.FoMで評価する場合はそのときの式も一緒に示す必要があります.

まとめ

  • 感度:センサ (画素)に入る光に対して出力される信号の大きさ
  • ISO感度:信号をカメラ内でどれだけ増幅させるかを示す指標
  • 開口率:画素の大きさに対するPD (フォトダイオード)の開口している部分の比率
  • リニアリティ特性(線形特性):光に対して出力がリニアリティかを示す特性
  • コンバージョンゲイン:電荷1つあたり何Vの電圧に変換するかを示すゲイン
  • 飽和電子数:画素内でため込むことができる最大の電子数
  • リニア飽和電子数:線形な領域で最大まで電荷をため込むことができる電子数
  • ダイナミックレンジ:光を電気信号に変換できる光の強さの範囲
  • QE (Quantum Efficient):画素に照射された光子が電子として出力された効率
  • PDE (Photon Detection Efficient):入射した光子を検出する比率
  • 光ショットノイズ:光がゆらぎによってひらいする光子がばらつくことで発生するノイズ
  • Read Noise:ランダムに発生するノイズ
  • 暗電流:光が全く入らない状態でも電荷が発生してしまう現象
  • 固定パターンノイズ:固定された場所で発生するノイズ
  • PRNU (Photo Response Non Uniformity):同じ強さの光が照射されても各画素で同じ出力にならない感度ムラのこと
  • DCR (Dark Count Rate)光が入射されてない状態で検知された確率
  • デッドタイム:子を検知してから,次に光子を検知できるようになるまで不感になった時間
  • AP (After Pulse):電子が捕獲されてしまい,あとから放出されて再びなだれが起きて信号として検出されていまう現象
  • PDP (Photon detection probability):入射された光子一つを検出する確率
  • IRT (Impulse Response Time):インパルス波を照射したときの応答
  • FoM (Figure of Merit):様々な性能を示す際に使われる性能指数

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