MIS構造 (金属-絶縁体-半導体構造)は金属-絶縁体-半導体を接触させた構造のことです.MIS構造はメモリやMOSトランジスタとして利用されます.本記事ではMIS構造について解説していきます.
MIS構造とは
MIS構造 (金属-絶縁体-半導体構造)は図1のように,金属 (Metal)-絶縁体 (Insulator)-半導体 (Semiconductor)を接触させた構造です.
金属と半導体で絶縁体を挟んでコンデンサのような構造を持ちます.金属と半導体にそれぞれ別の電極を付けて利用します.
電圧印加時の振舞い
MIS構造は金属にかける電圧によって,振舞いが変わります.図2の4つの電圧印加時の振舞いについて,それぞれ説明していきます.今回は半導体を接地させ,半導体がp型の場合で説明しています (n型半導体の場合は反対に動作します).
蓄積状態
蓄積状態は金属に負の電圧を印加した状態です.金属に負の電圧を印加しているため,絶縁体付近の半導体で正孔が蓄積されます (反対に電子は遠ざかります).
熱平衡状態 (理想)
熱平衡状態は金属に電圧を印加しない状態です.このとき,図のようにエネルギーバンドが曲がっていない状態 (フラットバンド)にあります.フラットバンドになる電圧をフラットバンド電圧といます (理想の状態ではフラットバンド電圧は0 V).
空乏状態
空乏状態では金属に正の電圧を印加した状態です.金属は正の電荷が溜まり,半導体の界面で正孔が離れて行くため,空乏層を形成します.空乏層には常に存在するキャリアがありません.
反転状態
反転状態では,金属にさらに高い正の電圧を印加した状態です.金属は正の電荷が溜まり,半導体の界面では正孔が離れて,反対に電子が誘起されて,n型の層 (反転層)が形成されます.反転層では,電子が移動することができます.
MIS構造の応用先
上で4つの状態を説明しましたが,これら状態の違いを利用して,トランジスタやメモリに応用することができます.
MIS構造を利用したトランジスタはMOSトランジスタと呼ばれます.これはp型半導体を利用したとき,反転層を形成したときのみで絶縁体付近の半導体で電子が移動できることを利用しています (n型半導体では反転層のときだけ正孔が移動できる).(MOSトランジスタについてはこちら)
MIS構造は金属と半導体が絶縁体を挟んだ構造で,コンデンサと同じような構造をしています.そのためMIS構造も容量を持ち,集積回路ではこれを利用したMOSキャパがあります.その他には,MIS構造の容量を利用したメモリ (RAM: ランダムアクセスメモリ)もあります.
実際のフラットバンド電圧
以上の理想の熱平衡状態では,エネルギーバンドがフラットである,フラットバンドを形成すると説明しました.しかし,実際のほとんどの場合,熱平衡状態ではフラットバンドになりません (フラットバンド電圧≠0 V).熱平衡状態でフラットバンドにならない理由は主に以下の3つがあります.
- 金属と半導体の仕事関数が等しくない
- 絶縁体内に電荷がある
- 絶縁体-半導体の界面で界面準位が無視できない
MOS構造
MIS構造の一つに,MOS構造があります.MOS (Metal–Oxide–Semiconductor)構造は絶縁体として酸化膜を用いた,金属-酸化膜-半導体の構造をしています.集積回路ではMIS構造として,MOS構造を用いることが一般です.
まとめ
- MIS構造 (金属-絶縁体-半導体構造):金属 (Metal)-絶縁体 (Insulator)-半導体 (Semiconductor)を接触させた構造
- MIS構造はかける電圧によって振舞いが変わる (蓄積状態,熱平衡状態,空乏状態,反転状態)
- MIS構造の応用先:RAM (ランダムアクセスメモリ),MOSトランジスタ