【イメージセンサ】CDS (相関2重サンプリング)の基本構造と動作

工学
碧(あお)

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 CDS (相関2重サンプリング)とは,イメージセンサで相関のあるリセットレベルと信号レベルの差を取ることで,リセットノイズ (KTCノイズ)を抑えた信号を取り出す手法,あるいは回路です.実際のCDSはより広い意味でも使われたりします.本記事ではCDSについて解説していきます.

CDS (相関2重サンプリング)とは

図1 CDS ( 相関2重サンプリング )とは

 まずイメージセンサでは図1のように,画素からリセットレベルと信号レベルの二つが出力されます.この二つのレベルの差が信号に相当します.

 この二つのレベルの差を出し,信号を取り出すのがCDS (Correlated Double Sampling: 相関2重サンプリング)です.CDSは広義の意味では:リセットレベルと信号レベルの差を取ることで信号を取り出す手法です.狭義の意味では:相関のあるリセットレベルと信号レベルの差を取ることで,リセットノイズ (kTCノイズ)を抑えた信号を取り出す手法のことです.

 本来のCDSは名前にCorrelated (相関)とあるように,狭義の意味が本来のCDSとなります.ただ,相関のないリセットレベルと信号レベルの差を取る回路に名前がないため,広義のCDSとしても使われるため注意が必要です.

True CDSとは

 CDSは上で説明したように,本来は狭義の意味でのことを指します.しかし,広義の意味でも使われるため,狭義の意味のCDSであることを示すために,True CDSということもあります.本記事ではこのTrue CDSについて説明していきます (以降は単にCDSと呼ぶ).

CDSの効果

 CDSは以上で説明したように,相関のあるリセットレベルと信号レベルの差を取ることでリセットノイズ (kTCノイズ)を抑制します.

 またリセットレベルと信号レベルを読みだす際に短い時間差で読むことで,ランダムノイズの一つである1/fノイズを低減します.

 CMOSイメージセンサでは信号電荷を電圧に変換する増幅MOSトランジスタがありますが,このトランジスタのしきい値ばらつきによって,オフセットが乗ることで固定パターンノイズの原因となります.CDSではリセットレベルと信号レベルの差を取る際に,このオフセットも互いの打ち消しあうことができるため,固定パターンノイズを低減することができます.

CDSの基本構造と動作

リセットノイズ (kTCノイズ)を低減する原理

図2 CDSによるリセットノイズの低減

 CDS (True CDS)でリセットノイズ (kTCノイズ)を低減する原理を,図2を用いて解説していきます.まずリセットノイズとは,画素をリセットするたびにリセットレベルが微妙に変動するために生じてしまうノイズのことです.つまり図2の上のように,リセットレベルを読みだした後に信号を転送して,信号レベルを読みだして差を取ればリセットノイズを低減できることになります.

 反対に図2の下のように,信号レベルを読んでから,画素をリセットして読み出すと,別のリセットレベルでの差を取ることになるため,リセットノイズが乗ってしまいます.それならば常にリセットレベルを先に読めばいいとなりますが,画素構造によって反対にノイズが増えてしまうことがあります.

 ここでは詳しくは解説しませんが,画素が4Tr型画素の場合はノイズが減りますが,3Tr型画素では反対にノイズが増えてしまいます.もちろん3Tr型画素でも先にリセットレベルを読んでから信号レベルを読みだすことはできます.しかしそうすると,リセットレベルを読んでから,露光してを信号レベルを読みだすことになるため,リセットレベルを読んでから信号レベルを読むまでに時間が長くなってしまいます.そうすると今度は1/fノイズが大きくなってしまうため,結果的にノイズが増えてしまいます.

デジタルCDSの基本構造と動作

 CDSは上で述べたような効果がありますが,これを実現する際にアナログの信号で動作させるアナログCDSとデジタルの信号で動作させるデジタルCDSがあります.現在ではデジタルCDSが標準であるため,デジタルCDSの基本構造と動作について説明していきます.

図3 デジタルCDSの基本構造と動作

 デジタルCDSの基本構造と動作について,図3を用いて説明していきます.例ではADCがシングルスロープ型ADCです.画素の出力は既に述べたように,リセットレベルと信号レベルの二つが出力されます.

 まずランプ信号が単調減少し始めると,アップダウンカウンタがカウントし始めて (例では511),ランプ信号が画素出力 (リセットレベル)より小さくなるとコンパレータの出力が反転してカウントが止まります.

 次に同様にランプ信号を戻してから単調減少させるとともに,先ほどのカウンタの続きから今度はカウントを増やしていき,ランプ信号が画素出力 (信号レベル)より小さくなるとコンパレータの出力が反転してカウントが終了します.これによってリセットレベルと信号レベルの差を取り,信号を取り出します.

まとめ

  • CDS (Correlated Double Sampling):リセットレベルと信号レベルの差を取ることで信号を取り出す手法
  • True CDS:相関のあるリセットレベルと信号レベルの差を取ることで,リセットノイズ (KTCノイズ)を抑えた信号を取り出す手法
  • アナログCDS:アナログ信号で信号を取り出すCDS
  • デジタルCDS:デジタル信号で信号を取り出すCDS

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