半導体の遷移は,直接遷移と間接遷移の二つがあります.本記事では直接遷移と間接遷移について説明します.
直接遷移と間接遷移
直接遷移では,波数 (運動量)が変化せずに電子が遷移します.間接遷移では,電子が遷移する際に波数が変化します.直接遷移か間接遷移かは,半導体の材料によって変わります.
まず,光の吸収と放出で遷移について説明した後,直接遷移と間接遷移についてそれぞれ説明していきます.
光の吸収と放出
図1で,光の吸収と放出について説明します.
電子は熱や光のエネルギーを吸収して,価電子帯から,よりエネルギーの高い伝導帯に励起します (励起:よりエネルギーの高い状態へ移ること).
励起した電子は,一定の時間がたって寿命になると元のエネルギーの低いか電子帯に遷移します (移る).この遷移が,物質によって直接遷移と間接遷移があります.遷移する際,余ったエネルギーが光として放出することがあります.このとき放出する光の波長はエネルギーギャップに依存します.
直接遷移
図2に直接遷移の様子を示します.縦軸はエネルギー,横軸は波数です.
図からわかるように,直接遷移では価電子帯と伝導帯の間で電子が遷移する際,波数が変わりません.直接遷移では電子が遷移する際に,波数が変わらないため発光効率が良く,LED (Light Emitting Diode)やLD (Laser Diode: 半導体レーザ)に用いられます.
直接遷移する半導体は直接遷移型半導体といいます.直接遷移型半導体としてはGaN,GaAs,InP,InAsがあります.
間接遷移
図3に間接遷移の様子を示します.同じく縦軸はエネルギー,横軸は波数です.
間接遷移では,電子が価電子帯と伝導帯の間で遷移する際に波数が変化しています.波数の変化は,フォノン (格子振動の量子)の放出・吸収が起こるためです (熱エネルギーとして放出している).間接遷移では,フォトン (光)の吸収とフォノン (格子振動の量子)の吸収・放出が,同時に起こらなければなりません.そのため,光の放出を伴う遷移 (再結合)の確立が低いため,発光効率が悪く,LEDやLDとしては用いられません.
間接遷移する半導体は間接遷移型半導体といいます.間接遷移型半導体としてはSi,Geなどがあります.
まとめ
- 直接遷移:電子の波数 (運動量)が変化しない遷移
- 間接遷移:電子の波数が変化する遷移