pn接合の降伏現象は高い逆バイアスをかけると急に電流が流れる現象です.本記事では降伏現象について解説します.
降伏現象
pn接合では基本的に逆バイアスでは電流は流れません.しかし図1のように高い逆バイアスをかけると急に電流が流れるようになります.これを降伏現象 (降伏,逆降伏)と呼びます.
降伏はなだれ降伏とツェナー降伏の二つの原因で発生します.それぞれ説明していきます.
なだれ降伏
なだれ降伏 (アバランシェ降伏)の発生原理について解説していきます.図2のように中性領域か空乏層で発生した少数キャリアが逆バイアスによって加速されます.逆バイアスが高いと加速されたキャリアが高い運動エネルギーを持ち,散乱した際に電子・正孔対が発生することがあり,これを衝突イオン化といいます.これが繰り返し発生し,なだれのようにキャリアがどんどん増えていくことで電流が流れ,これをなだれ降伏といいます.
空乏層で単位長さあたりの衝突イオン化が起きる確率が\(\alpha\)のとき,空乏層で\(\int \alpha dx≧1\)のときになだれ降伏が発生します.
ツェナー降伏
ツェナー降伏の発生原理について解説します.高い逆バイアスがかかると図3のように価電子帯と伝導帯の距離が短くなります.そうするとトンネル効果が発生して,価電子帯の電子が伝導帯に移動し,正孔も発生します.これが多数発生すると電流が流れるようになります.
ツェナー降伏は,空乏層での最大電界があるしきい値を超えると発生します.
なだれ降伏とツェナー降伏
なだれ降伏とツェナー降伏のどちらが先に発生するかは材料や不純物濃度のよって変わります.不純物濃度が低いとなだれ降伏が起きやすく,不純物濃度が高いとツェナー降伏が起こりやすいです.実際は両方起こってる状態が多いです.また,どちらもバンドギャップが大きいと起こりにくいです.
まとめ
- 降伏現象:高い逆バイアスをかけると急に電流が流れるようになる現象
- なだれ降伏 (アバランシェ降伏):衝突イオン化が繰り返し発生することで起こる降伏
- ツェナー降伏:トンネル効果が発生して価電子帯の電子が伝導帯に移動することで起こる降伏
- なだれ降伏とツェナー降伏のどちらが先に発生するかは材料や不純物濃度のよって変わる