【半導体工学】半導体の種類 (構成元素、結晶、遷移方法、エネルギーギャップ)

工学
あお

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 半導体は様々な種類に区別することができます.本記事では構成元素,結晶の種類,遷移,エネルギーギャップ,パワーによる半導体の種類を解説します.

構成元素による種類

 半導体は構成される元素によって元素半導体化合物半導体混晶半導体の3種類があります.構成元素によって半導体の特徴やプロセスの発展度が違い,目的によって構成元素を使い分けます.

(1) 元素半導体

 元素半導体はシリコン (Si),ゲルマニウム (Ge),炭素 (C)などのⅣ族元素だけで構成された半導体です.

 その中でもシリコン (Si)は豊富な資源と使いやすさから,集積回路でもっとも使われる半導体です.シリコンと比較して,ゲルマニウム (Ge)は移動度が高い特徴があり,これらも特殊用途の集積回路に用いられます.

 元素半導体は間接遷移型の半導体であるため,発光ダイオード (LED)などには用いられませんが,フォトダイオード (PD)としてイメージセンサや太陽電池としても用いられます.

(2) 化合物半導体

 化合物半導体は2種類の元素から構成される半導体です.Ⅲ族の元素とⅤ族の元素からなるⅢ-Ⅴ族化合物半導体や,Ⅱ族の元素とⅥ族の元素からなるⅡ-Ⅵ族化合物半導体,二つのⅣ族の元素からなる化合物半導体があります.

 化合物半導体であるGaAs (Ⅲ-Ⅴ)や,InP (Ⅲ-Ⅴ)などは,発光ダイオードや移動度の高いトランジスタなどに利用されます.SiC (炭化ケイ素)は高耐圧でバワーデバイスとしてよく用いられます.

(3) 混晶半導体

 混晶半導体は化合物半導体を組み合わせて,3種類以上の元素から構成される半導体です.様々な半導体材料とその比率を制御することで様々な特性の半導体を開発することができます.

結晶の種類

 半導体などの固体を形成する結晶は単結晶多結晶アモルファスの3種類に分類できます (詳しくはこちら).結晶の種類によって半導体の特性が変わります.

(1) 単結晶

単結晶
図 単結晶のイメージ図

 単結晶は結晶全体が一定の原子構造のみで構成される結晶です.単結晶の半導体は移動度が高く,全体で均一の特性を持ちます.集積回路で用いられます.

(2) 多結晶

図 多結晶のイメージ図

 多結晶は複数の一定の原子構造を持つまとまりで構成される結晶です.単結晶と比較して一定の原子構造を持つまとまり間で結晶の欠陥となり,デバイスによっては性能が落ちてしまいますが価格が低い特徴があります.例えば太陽電池では多結晶のシリコン (Si)は単結晶のシリコンと比べて発電量が低くなりますが価格が安い特徴があります.

(3) アモルファス

図 アモルファスのイメージ図

 アモルファスは一定の原子構造を持たない結晶です.半導体では単結晶や多結晶とは違う特性があるアモルファス半導体があります.

直接遷移と間接遷移による種類

 半導体は電子が価電子帯から伝導帯に遷移する際に,電子の波数 (運動量)が変化するものと,しないものがあります.波数が変わらない遷移を直接遷移 (直接遷移型半導体),波数が変わる遷移を間接遷移 (間接遷移型半導体)といいます(詳しくはこちら).直接遷移か間接遷移でも半導体の特性が変わります.

(1) 直接遷移型半導体

図 直接遷移型半導体のポテンシャル図

 直接遷移型半導体は電子が価電子帯から伝導帯に遷移する際に波数 (運動量)が変化しないで,直接遷移する半導体のことです.直接遷移型半導体は電子とホールが再結合する際に運動量のやり取りをしないため,エネルギーを光子として放出します.そのため発光効率が良く,発光ダイオード (LED)として利用されます.

 直接遷移型半導体としてはGaAs,GaN,InPなどがあります.

(2) 間接遷移型半導体

図 間接遷移型半導体のポテンシャル図

 間接遷移型半導体は電子が価電子帯から伝導帯に遷移する際に波数 (運動量)が変化する間接遷移する半導体のことです.間接遷移型半導体はあまり発光しないため,集積回路などで利用されます.間接遷移型半導体としてはSi,Geなどがあります.

エネルギーギャップ・パワーによる種類

 以上で紹介した半導体の種類以外もあります.バンドギャップが広い半導体であるワイドギャップ半導体,電力を制御・供給するための半導体であるパワー半導体を紹介します.

(1) ワイドギャップ半導体

 バンドギャップ (禁制帯幅)が広い半導体をワイドギャップ半導体といいます.ワイドギャップ半導体としてはSiC,ダイヤモンドや,GaN,AlN,ZnO,ZnS,ZnSeなどがあります.バンドギャップが大きいため青,紫などの短波長を発行する発光ダイオードや,高耐圧で高周波で利用できる半導体として用いられます.

(2) パワー半導体

 パワー半導体は電力を制御・供給するための半導体であり,電源をより省エネで小型な素子で制御・供給できるとして注目・開発が盛んにされています.

まとめ

  • 半導体の構成元素:元素半導体,化合物半導体,混晶半導体の3種類
  • 半導体の結晶構造:単結晶,多結晶,アモルファスの3種類
  • 半導体でのキャリアの遷移:直接遷移と間接遷移がある
  • ワイドギャップ半導体:バンドギャップ (禁制帯幅)が広い半導体
  • パワー半導体:電力を制御・供給するための半導体

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