ADC (Analog to Digital Converter,A/D変換器)はアナログ信号をデジタル信号に変換する電子回路です. 本記事ではイメージセンサで良く使われるADCについて解説していきます.
ADCの種類
ADC (Analog to Digital Converter,A/D変換器)はアナログ信号をデジタル信号に変換する電子回路です.ADCには様々あり,以下のようなものがあります.
- フラッシュADC
- パイプラインADC
- シングルスロープADC
- 逐次比較 (SAR)ADC
- サイクリックADC
- ΔΣ (デルタシグマ)ADC
本記事ではイメージセンサで良く使われるシングルスロープADC,逐次比較ADC,サイクリックADC,ΔΣADCについて解説・比較します.
シングルスコープADC
シングルスロープADCは図1のような構造をしたADCです.画素からのアナログ信号と,電圧が徐々に上がるランプ信号をコンパレータに入力します.そしてランプ信号を始めたタイミングからランプ信号がアナログ信号より大きくなるまでをカウントすることで,アナログ信号をデジタル信号に変換します.
シングルスロープADCはシンプルな構造で小型化しやすいですが,分解能を1ビット増やしたい場合は2倍の回数のクロック数が必要になるため,高分解能にしたい場合に高速変換することが難しい欠点があります.
逐次比較ADC
逐次比較 (SAR)ADCは図2のような構造をしたADCです.逐次比較ADCはSA (Successive Approximation) LogicとDAC (Digital to Analog Converter)で生成したデジタル信号と,アナログ信号を1ビットずつ逐次比較して,デジタル信号を少しずつアナログ信号に近づけていくことでアナログ信号をデジタル信号に変換するADCです.逐次比較ADCでは1ビット毎に別の容量を持つキャパシタが必要になります.
逐次比較ADCではNビットの分解能ではN回動作させればよいため,高分解能にしやすい特徴があります.しかし高分解能になるほどDACが大きくなってしまう構造をしているため,面積が大きくなる欠点があります.
サイクリックADC
サイクリックADCは図3の構造をしたADCです.サイクリックADCは逐次比較ADC同様に1ビットずつ変換していきますが,1ビット変換するごとに閾値 (\(V_{ref}\)を超えていた場合に,デジタル信号との差分をとってAmpで増幅させて1ビットADCで変換していく構造です.そのため毎回同じ容量を持つキャパシタを利用できる特徴があります.
サイクリックADCでは高精度のAmpが必要であるため,消費電力が大きい欠点があります.
ΔΣ (デルタシグマ)ADC
ΔΣ (デルタシグマ)ADCは図4の構造を持つADCです.ΔΣADCでは減算器でアナログ信号とDAC (Digital to Analog Converter)からフィードバックされた基準信号の差分 (Δ)を取り,積分器で積分 (Σ)した信号と基準信号をコンパレータで比較して0,1を決めます.そしてその信号が減算器へとフィードバックされます.この際,高周波領域に量子化誤差の成分がありますが,こちらをデシメーションフィルタで除去することでノイズの少ないデジタル信号を得ます.
ΔΣADCは低ノイズですが,その反面に回路と動作が複雑で高速化が難しく,また消費電力や面積でも良くない欠点があります.
各ADCの比較
今回紹介したADCの特徴は以下の通りです.方式によって良い点も悪い点もあるため,用途や会社によって様々使われています.
ADC | シングルスロープ | 逐次比較 | サイクリック | ΔΣ |
---|---|---|---|---|
速度 | × | 〇 | 〇 | × |
消費電力 | 〇 | 〇 | × | × |
ノイズ | × | × | × | 〇 |
面積 | 〇 | × | 〇 | × |
ハイブリット型ADC
以上では単体のADCを紹介してきましたが,方式ごとによって利点・欠点あるため,複数のADCを組み合わせたハイブリット型ADCも利用されます.
まとめ
- シングルスロープADC:ランプ信号がアナログ信号より大きくなるまでの時間をカウントすることでデジタル変換するADC
- 逐次比較ADC:1ビットずつ変換することで徐々にデジタル信号をアナログ信号に近づけていくことでデジタル変換するADC
- サイクリックADC:1ビット毎にアナログ信号とデジタル信号の差分をとって1ビットADCでデジタル変換するADC
- ΔΣADC:ΣΔ変調でアナログ信号をパルス列に変換することでデジタル変換するADC