ADC (Analog to Digital Converter,A/D変換器) はアナログ信号をデジタル信号に変換する電子回路です. 本記事ではイメージセンサにおける基本的なADCの構造について解説していきます.
イメージセンサにおけるADC (Analog to Digital Converter)の概要
ADC(Analog to Digital Converter、アナログ・デジタル変換器)はイメージセンサが捉えた光(アナログ信号)をデジタルデータに変換する回路です。
ADCの役割
カメラの仕組みを考えてみましょう。
1️⃣ 光がイメージセンサに当たる
- イメージセンサ(CMOSやCCD)は、光を電気信号(電圧)に変換します。
- でも、この電圧は アナログ信号 なので、そのままではコンピュータで扱えません。
2️⃣ ADCがアナログ信号をデジタル信号に変換
- ADCが電圧を数値化して、デジタルデータ(0と1)にします。
- これにより、カメラは画像データとして保存・処理できます。
3️⃣ 画像として表示・保存
- デジタルデータは JPEGやRAW などの形式で記録され、画面に表示されます。
ADCの変換の仕組み(簡単な例)
例)下記のようにフォトダイオードは明るさ (光の強さ)に応じてアナログ電圧が出力されて、アナログ電圧の大きさによってADCによってデジタル信号が出力されます。下記の場合は8bitのADCで0から最大で255までの諧調を持ちます。
明るさ(光の強さ) | アナログ電圧 | ADCの変換後(デジタル値・8bit) |
---|---|---|
黒(暗い) | 0V | 00000000(0) |
灰色(中間) | 1.5V | 10000000(128) |
白(明るい) | 3V | 11111111(255) |
ADCの性能を決めるポイント
ADCの性能としては様々ありますが、ビット数や変換速度、電力などがあります。
ビット数(bit depth)
➡ ビット数が高いほど、明るさの階調が細かくなります!例えば下記のようにビット数によって違いがあります。
- 8ビット(256段階) → 一般的な画像(JPEGなど)
- 10ビット(1024段階) → より滑らかなグラデーション
- 12ビット・14ビット(4096〜16384段階) → 高画質なRAW画像
変換速度
➡ 変換速度は動画撮影や連写に影響します。遅いと、動きの速い被写体がブレてしまい、速いADCほど、高フレームレート(FPS) の動画撮影が可能になります。
イメージセンサにおけるADCの基本構造
直列ADC

直列ADCは図1のようにイメージセンサの読出し回路の後段にADCがあり,一つあるいは数個のADCでイメージセンサの画素すべてのアナログ信号を順次,デジタル信号に変換していきます.
この方式では構造が簡単でADCの数を少なくでき,同じADCを共有できるためADCのばらつきの影響をなくすことができます.しかしより多くの画素を変換しなければならないため,フレームレートを高くしずらいです.またADCを高速に動作させなければならないため,現在では画素数が少ないイメージセンサなどで限定的に使用されます.
カラムADC

カラムADCでは図2のように,ADCが各カラム (列)毎にあります.この方式では一行分の画素を同時にデジタル信号へ変換します.
そのため,多画素でも高速に変換できるため多く使われています.また直列ADCと比べてより早い段階でデジタル信号に変換できるため,一部のノイズをより小さくすることができます.
画素並列ADC

画素並列ADCは図3のように各画素にADCを搭載する方式です.画素並列ADCでは画素毎にADCがあるため高速かつ,読出し回路によるノイズを低減できる特徴があります.
しかし各画素にADCがあるため画素が大きくなり,またPD (Photo Diode)の占める割合が下がり感度が落ちるといった欠点がありました.しかしながら,裏面照射 (BSI)や積層構造といった技術により,これらの欠点を克服した構造が出てきています.
まとめ
- ADC (Analog to Digital Converter):アナログ信号をデジタル信号に変換する電子回路
- 直列ADC:読出し回路の後段にあるADCで,各画素のアナログ信号を順次デジタル信号に変換する方式
- カラムADC:各カラムにあるADCでアナログ信号をデジタル信号に変換する方式
- 画素並列ADC:各画素にあるADCでアナログ信号をデジタル信号に変換する方式