固体の結晶の種類は単結晶,多結晶,アモルファスがあり,それぞれ特徴が違います.本記事では固体の結晶の種類やそれぞれの特徴・応用先について説明します.
固体の結晶の種類
半導体などの固体の結晶は原子配列によって単結晶,多結晶,アモルファスの3種類に分類することができます.
単結晶
単結晶は図1のように,結晶全体が規則的な原子配列で構成された結晶です.単結晶を生成するためには高温高圧が必要です.高温によって溶けた物質が冷えて固まる際,ある点を中心に物質が固まることで単結晶が出来上がります.透明に見えるダイアモンドも単結晶で,多結晶のダイアモンドは宝石のような透明感と輝きはありません.
集積回路で使われる半導体は単結晶で,純度が99.999999999 % (イレブン・ナイン)ほどの高い純度の単結晶構造を持ちます.単結晶は高い移動度を持ちます.また,すべての箇所で原子配列が同じで,場所による特性の違いが少ないため,集積回路では単結晶が使われます.
多結晶
多結晶は図2のように,部分的に一定の原子配列を持つ結晶です.多結晶は微細な単結晶 (微結晶)が複数つながっている構造です.隣接する微結晶間で結晶粒界という界面が存在します.この性質により一般に多結晶は単結晶に比べて強度が弱く,移動度が低くなります.
多結晶のシリコンはポリシリコンと呼ばれ,IC (集積回路)や太陽電池で用いられます.単結晶シリコンのICに比べて性能落ちますが,ポリシリコンのICもあります.単結晶のICにおいても,高濃度の不純物を添加したポリシリコンはゲートとして用いられます.ポリシリコンゲートは金属ゲートと比べて,高温のプロセスに耐えられるメリットがあります.
太陽電池において,多結晶は単結晶に比べて発電効率は下がってしまいますが,より安く製造できるメリットがあります.反対に次に説明するアモルファスと比べて多結晶の方が移動度が高くなります.その特徴を生かして,シリコンが使われる液晶ディスプレイ (LCD)であるTFT液晶 (Thin Film Transistor LCD)ではアモルファスの代わりにポリシリコンを用いた低温ポリシリコン液晶という液晶ディスプレイもあります.
アモルファス
アモルファスは図3のようにランダムな原子配列をもつ結晶です.有名なアモルファスとしてはガラスがあります.アモルファスは物質全体で均質で,結晶粒界や欠陥が少ない特徴があります.また,結晶構造がランダムであるため,移動度が小さくなり,一定のエネルギーバンドを持たない特徴があります.
アモルファスシリコン (a-Si)は結晶のランダム性より,単結晶シリコンと比べて光吸収係数が高いです.太陽電池においてはより薄く,低い温度が生成できるため,安価です.他にはアモルファスシリコン (a-Si)を用いた液晶ディスプレイ (LCD),TFT液晶 (Thin Film Transistor LCD)があります.
半導体の結晶構造
SiやGeなどの元素半導体の結晶構造は,ダイヤモンド構造をしています.以下にダイヤモンド構造とその結晶構造を示します.
ダイヤモンド構造はある特定の向きから見ると特徴的な構造としています.以下にミラー指数 (面指数)が(100),(110),(111)のときの,ダイヤモンド結晶のミラー指数の面と上から見た図 (断面)を示します.このような結晶面ではきれいに割れやすい特徴があります (宝石のダイヤモンドのカットはこれを利用します).また上から見ると穴が続いており,これらを利用すると不純物を奥まで注入することができます.これをチャネリングといいます.
GaAsやInPなどの多くのⅢ-Ⅴ族化合物半導体やⅡ-Ⅵ族化合物半導体は閃亜鉛鉱構造をしています.閃亜鉛鉱構造は異なる原子で構成されている以外はダイヤモンド構造と同じ構造をしています.GaN,AlN,ZnO,ZnSなどの一部の化合物半導体はウルツァイト構造をしています.
結晶構造はX線回折や電子線回折を使って解析できます.
まとめ
- 単結晶:結晶全体が規則的な原子配列で構成されている結晶
- 多結晶:部分的に一定の原子配列を持つ結晶
- アモルファス:原子配列がランダムな結晶