集積回路の故障・特性劣化の原因まとめ!

工学
あお

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 この記事では、集積回路(IC)の故障や特性劣化の原因について解説しています。回路の劣化を引き起こす要因として、温度変化、電圧の変動、製造過程の不確実性などを挙げ、これらが集積回路の性能に与える影響を詳しく説明しています。

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集積回路の故障と特性劣化

 集積回路(IC)の故障や特性劣化は、主に温度変化、電圧変動、製造過程の不確実性、電磁干渉などによって引き起こされます。これらの要因が蓄積されると、回路の性能が低下したり、誤動作が発生したりする可能性があります。

 特に、スマートフォンやコンピュータなどの高度な電子機器では、集積回路の高い信頼性が必要不可欠であり、その寿命や耐久性を向上させるための技術や対策が重要です。

歩留まり・バスタブカーブとは

歩留まり

 歩留まりとは製品を製造する際の「良品/全体」のことです.歩留まりが高いほど初期の不良品が少ないため,生産性が向上してコストを抑えることができます.集積回路で歩留まりを向上させる方法としては,以下のことがあります.

・チップサイズを小さくする

・クリーンルームでの製造

・歩留まりを向上させるための設計
    ー冗長性 (リダンダント)を持たせる
    ーDFM (Design For Manufacturability):製造時のばらつき等を考慮した設計
    ーDFT (Design For Testability):テストを効率よくするための設計 (出荷品質向上)

バスタブカーブ

図 バスタブカーブ

 バスタブカーブとは故障率曲線のことで,製品を製造してからの時間と故障率の関係で,バスタブのような形をした曲線をしているため,このように呼ばれています.

 バスタブ曲線の初期故障期、偶発故障期、摩耗故障期の長さは、製品や製造プロセス、使用条件によって異なり、初期故障期が一律に1年というわけではありません。潜在的な初期故障を早期に顕在化させて除外する目的ではバーンインやスクリーニングが行われます。一方、加速試験は高温・高電圧などのストレスを加えて、故障メカニズムや寿命・信頼性を短時間で評価するための試験です。

 偶発故障は経過時間によらない故障です.突発的な事象が故障の原因となることが多く,故障率としては低いです.

 摩耗故障は摩耗,疲労,部品の寿命によって故障率が再び上がる故障です.

集積回路の故障・特性劣化の原因

ホットキャリア注入 (HCI:Hot Carrier Injection)

 ホットキャリア注入 (HCI:Hot Carrier Injection)は,高エネルギーのキャリア (ホットキャリア)が酸化膜中に注入,捕獲されることでトラップとなって特性劣化や故障を引き起こす現象です.ホットキャリアは酸化膜からゲートに突き抜けたり,基板側へ突き抜けたりもします.

 微細化によって電界が高くなると,ホットキャリア注入も起こりやすくなります.また一般にドレイン電圧が高く,温度が低いほどホットキャリア注入が起こりやすいです (温度が低いとフォノン散乱によるエネルギー損失が減るため).

対策

・LDD (Light Doped Drain)によって,電界を緩和することで,ホットキャリア注入も緩和できます.

TDDB (Time Dependence Dielectric Breakdown)

 MOSで低電界が形成されている場合でも,時間の経過とともに破壊が起きます.ゲートに電圧を印加し続けた際に,電界によってキャリアが酸化膜中に注入されて欠陥が生成されます.TDDB (Time Dependence Dielectric Breakdown)は,この酸化膜の欠陥が繰り返し起こって,ゲートからSi基板までつながることでおこる絶縁破壊とされています.

NBTI(Negative Bias Temperature Instability)

 NBTI(Negative Bias Temperature Instability)は,pMOSに負バイアスを印加し続けたときにおこる特性劣化です.

 NBTIは、主にpMOSへ負のゲートバイアスを長時間印加したときに、しきい値電圧の変化や駆動能力の低下が生じる劣化現象です。ゲート絶縁膜やSi/絶縁膜界面における電荷トラップや界面欠陥の生成・変化など複数の機構が関係すると考えられており、Si-H結合の反応だけで一意に説明するのは適切ではありません。

 NBTIだけではなく,nMOSでおきる PBTI (Positive Bias Temperature Instability)もあります.

対策

・NBTIは負電圧を印加し続けていると特性劣化が起こりますが,このストレスをオフにすることで急速に回復します.

エレクトロマイグレーション (EM:Electromigration)

 エレクトロマイグレーション (EM:Electromigration)は配線に電流を流す際に金属イオンが移動して,陰極ではボイドが発生してオープンに,陽極側ではヒロックやウィスカが成長してショートになる故障です.

 多結晶の粒界や結晶の表面で起こりやすいです.

対策

・配線にメッキをする (バリアメタル),配線に銅を使う,コンタクトにタングステン (W)を用いることエレクトロマイグレーションへの耐性が向上します.

ストレスマイグレーション (SM:Stress Migration)

 ストレスマイグレーション (SM:Stress Migration)は膜や配線での熱膨張係数の違いから,温度ストレスによって応力が発生し,この応力によって金属原子が移動することでボイドや断線が起こる現象です.

対策

・エレクトロマイグレーション同様,配線にメッキをする (バリアメタル),配線に銅を使う,コンタクトにタングステン (W)を用いることストレスマイグレーションへの耐性が向上します.

イオンマイグレーション (エレクトロケミカルマイグレーション)

 イオンマイグレーション (Ion Migration,エレクトロケミカルマイグレーション)は電位差による化学反応によって,金属が化学反応を繰り返しながら樹枝状に広がっていく現象です.特性劣化や短絡を引き起こします.

 温度,湿度が高いほど起こりやすく,金属原子の種類では銀 (Ag)や銅 (Cu)で起こりやすいです.

対策

・銅配線にメッキをする (バリアメタル),配線間にキャップ膜を設けることで低減することができます.

ウィスカ

 ウィスカは金属がひげ状に結晶成長する現象で短絡,故障を引き起こします.ウィスカはCu材料との化学反応,温度,外部からの応力,エレクトロマイグレーションによって起こるといわれています.

 SnメッキやZnメッキで起こりやすいです.

Soft error (SEU:Single Event Upset)

 Soft error (SEU:Single Event Upset)はパッケージなどに微量に含まれるウラン (U)やトリウム (Th)からのα線や,宇宙からの宇宙線でメモリが反転したりする現象です.故障ではなく一時的なエラーで,放射線によって高密度の電子正孔対が発生することで,メモリーやセンサーで誤動作を起こします.

 微細化によって1セルが保持する電荷量が減り、ソフトエラーに対する感度が高まる要因はあります。ただし、実際のソフトエラー率はデバイス構造、メモリセル、動作電圧、パッケージ、回路上の対策などにも左右されるため、微細化だけで一律に増加するとは限りません。似た現象にSEB(Single Event Burnout)とSEL(Single Event Latchup)があります。

対策

・パッケージなどの純度を上げてα線を減らす
・チップ表面をコーティングしてα線を防ぐ
・ソフトエラー耐性のある設計 (一つのメモリーやセンサーで扱う容量を増やすなど)

SEB (Single Event Burnout)

 SEB (Single Event Burnout)は放射線によって発生した電子正孔対が原因で,大電流が流れて破壊が起きる現象です.パワー素子で発生しやすいです.

ラッチアップ

 集積回路では構造上,トランジスタでサイリスタが寄生しています.通常の状態では,この寄生サイリスタはオフになるようになっていますが,何らかの原因でオンになってしまうことがあります.この寄生サイリスタがオンになってしまう現象がラッチアップです.ラッチアップが起こると大電流を流して破壊の原因になります.

 寄生サイリスタがオンになる原因として,外来サージなどのノイズがあります.また放射線によって電子正孔対が発生して,ラッチアップの原因となるSEL (Single Event Latchup)もあります.

水分による故障

 水分も集積チップの故障の原因になります.集積チップはパッケージ (樹脂)によって,水分から守られていますが完璧ではありません.

 水分が樹脂から透過したり,樹脂と配線などの界面が水分が侵入することで,パッド部やクラックで露出させたAlを腐食させて故障や特性劣化の原因になります.また,製造時にもパッケージに水分があり状態で加熱すると,クラックを起こして故障することもあります.

 樹脂封止パッケージの吸湿は現在でも管理が必要な課題です。リフロー時の剥離やクラックなどを防ぐため、MSL(Moisture Sensitivity Level)に基づく防湿梱包、フロアライフ管理、必要に応じたベーキングなどが行われます。

静電破壊

 ESD(Electrostatic Discharge)は静電気の放電現象です。放電時に生じる大きな瞬間電流や電圧によって、ゲート絶縁膜、接合部、配線などが損傷し、故障につながることがあります。

対策

・静電気が起きづらい構造にする
・アースする
・チップの前にダイオードなどを設けて,大電流を逃がす保護回路を設ける

パッド・ワイヤーボンディング・パッケージの故障

 以上で説明した以外にも,以下にようにパッド・ワイヤーボンディング・パッケージの故障があります.

  • パッケージとチップをつなぐワイヤとパッドの接合面での故障.Au (金)-Al (アルミニウム)などの異種金属の接合での故障として,熱膨張の不整合,拡散係数の差によるボイド (カーケンダル効果),酸化による高抵抗化などが原因としてある.
  • チップや樹脂の熱膨張の差などによって発生した応力によって,Al (パッド-ワイヤーボンディングの接合)がスライドしてしまう,Alスライド.Alスライドはパッシベーション膜などがクラックして,故障の原因となりうる.
  • 樹脂の強度と熱膨張率を制御するために,添加したフィラーがチップ表面にダメージを与えて故障の原因となる.

まとめ

  • 歩留まり:製品を製造する際の「良品/全体」のこと.歩留まりが高いほど初期の不良品が少なく,生産性が向上してコストを抑えられる.
  • バスタブカーブ:故障率曲線.製品を製造してからの時間と故障率の関係を示す曲線.
  • 集積回路の故障・特性劣化の原因

    ー ホットキャリア注入 (HCI:Hot Carrier Injection)
    ー TDDB (Time Dependence Dielectric Breakdown)
    ー NBTI(Negative Bias Temperature Instability)
    ー エレクトロマイグレーション (EM:Electromigration)
    ー ストレスマイグレーション (SM:Stress Migration)
    ー イオンマイグレーション (エレクトロケミカルマイグレーション)
    ー ウィスカ
    ー Soft error (SEU:Single Event Upset)
    ー SEB (Single Event Burnout)
    ー ラッチアップ
    ー 水分による故障
    ー 静電破壊
    ー パッド・ワイヤーボンディング・パッケージの故障

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